2つの目で見つける異常検知
ICONIP 2026 採択論文のやさしい解説

「いつもと違う」は、
2つの目で見つける。

古くからあるAI「ボルツマンマシン」を、今よく使われる方法と組ませたら、おかしなデータをもっと上手に見つけられました。

J. Niimi (2026) Revisiting Energy-based Tabular Anomaly Detection: Energy and Reconstruction are Complementary

まず、何をしたいの?

たくさんの表データの中から、 ひとつだけ変なもの を見つけたい。これを 異常検知 といいます。不正な取引や、ネットワークへの攻撃を見つけるのに使われます。

1つめの目

描き直してみる

→ 思い出して
描き直す
そっくり
= いつもどおり
→ 思い出して
描き直す
ズレだらけ
= あやしい

ふつうのデータだけを見て育ったAIは、ふつうのデータなら上手に描き直せます。見たことのない変なデータは、うまく描けません。その ズレの大きさ で判断します。

これが今の主流で、オートエンコーダ(AE)と呼ばれます。

2つめの目

どれくらい「居心地が悪いか」を測る

山の上 = めずらしい 谷の底 = よくある 谷の底 = よくある ↑ エネルギーが高い

こちらのAIは、データの世界を でこぼこの地形 として覚えます。よくあるデータは 谷の底 、めずらしいデータは 山の上 。高いところにいるほど、あやしい。

この高さを「エネルギー」と呼びます。使ったのは深層ボルツマンマシン(DBM)という、昔からあるAIです。表データの異常検知では、ほとんど使われていませんでした。

わかったこと① 2つ合わせると強い

0.731 描き直しの目
だけ
0.713 エネルギーの目
だけ
0.745 2つの目を
合わせる

それぞれが付けた「あやしい順」の順位を足すだけ。それだけで、どちらか片方より上手に見つけられました。

数字は見つける上手さ(AUROC)。1.0 が満点、0.5 があてずっぽう。銀行の営業データ 45,211 件で、20回くり返した平均です。

わかったこと② 誰と組んでもいいわけじゃない

「描き直しの目」に、いろいろな相棒を組ませてみました。右にのびたら 良くなった 、左にのびたら 悪くなった 。

−0.05 +0.02

良くなったのは ボルツマンマシンと組んだときだけ 。ほかの7つの方法は、組むとむしろ悪くなりました。

ネットワーク攻撃のデータ 74,826 件でも同じ向きの結果でした(もともと 0.993 と高い成績が、さらに +0.002)。「DBMの描き直し」の +0.004 は、銀行データでは誤差の範囲です。

つまり

似た者同士

同じところを見て、同じところを見落とす。足しても増えない。

ちがう見方の2人

片方が見落としたものを、もう片方が拾う。

「うまく描き直せるか」と「地形のどこにいるか」は、別の見方です。だから組ませると補い合えます。古いAIにも、まだ出番があります。