前の研究では、GPT-4.1 は引用が約90回を超えた論文から覚え始めていました。その境目が、ほかのAIでも同じなのかを確かめました。
J. Niimi (2026) Cross-Model Memorization Thresholds in Citation Generation: Evidence from Field-Level Cloze on Bibliographic Records
問題の形の例です。
本物の論文の情報から 1か所だけ隠して 、AIに埋めてもらいます。前の研究ではAIが自分で論文を選んでいましたが、今回はこちらで選んだ論文で試しました。一字でもちがえば不正解です。
第一著者を半分以上当てられるようになる引用回数を、AIごとに比べました。 左にあるほど 、あまり有名でない論文まで覚えています。
Gemini や DeepSeek は約100回、GPT-5.4 は約500回。ところが小型版の GPT-5.4-mini は約1,500回 で、ほかより一桁多く引用された論文でないと覚えていませんでした。
同じ会社の大きい GPT-5.4 はふつうだったので、会社のちがいではなく モデルの小ささ が効いていると考えられます。
コンピュータ科学の論文での結果。細い線は95%信頼区間。
引用1,000回を超える論文での正解率(%)。
AIごとに正解率の高さはちがっても、 タイトルと第一著者から先に覚え、共著者の並びやページ番号は後回し という順番は、どのAIでも同じでした。前の研究で見つけた「覚え方の階段」は、GPT-4.1 だけの話ではなかったことになります。
答える前に考えさせるモードをオンにすると、GPT-5.4-mini はタイトルの境目が 1,588回から484回 へと大きく下がりました。知識が増えたわけではありません。覚えてはいたのに すぐには取り出せなかった記憶 に、考えることで届くようになったと考えられます。
一方 DeepSeek では、考えすぎて正しく覚えていた答えを変えてしまうことがありました。
がん研究の論文でも同じテストをすると、順番やAIどうしの関係は同じでしたが、境目はどのAIでも 1.5〜3倍高く なりました。同じ引用回数でも、ネット上に写しが出回る量が分野によってちがうからだと考えられます。
「引用が何回以上ある論文なら、AIの答えを信じてよい」という ひとつの数字はありません 。境目は、使うAI、考えるモードの有無、そして研究分野によって、10倍以上動きます。
AIに参考文献を聞いたら、有名な論文でも、自分で確かめるのがいちばん確実です。